ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

陥没地帯 (110)

塾で高校生に三角関数を教えていたら、倍角とか半角の公式が覚えられないといってきたので、少しびっくりして「なんで覚える必要があるの?」と思わず聞き返してしまった。

それで思い出したんだが、昔、受験参考書かなんだったか、


11^2 = 121\\
12^2 = 144\\
13^2 = 169\\
14^2 = 196\\
15^2 = 225\\
16^2 = 256\\
17^2 = 289\\
18^2 = 324\\
19^2 = 361

は覚えておこうとかあって、その受験参考書がはらみもつ前提みたいなものがにわかに信用できなくなったことがあった。初等教育で暗記することは必要なこともあり、一概に否定するつもりはないが、この場合、わざわざ覚えるなら、その時間でもっとましなことを覚えた方がよいと思ったからだ。もちろん、自然に覚えてしまうというのは別の話である。

だいたい、


11^2 = (11 + 1)(11 - 1) +1 = 121\\
12^2 = (12 + 2)(12 - 2) + 4 = 144\\
\cdots \\
19^2 = (19 + 9)(19 - 9) + 81 = 361

で簡単に求まるし、そもそも 2 桁で 10 の位が 1 のかけ算は非常に簡単で、

 14 \times 17\\
= (10 + 4)(10 + 7)\\
= 10 \times (10 + 4 + 7) + 4 \times 7\\
= 10 \times (14 + 7) + 4 \times 7

だから、

1) 147 を足して 21
2) 10 倍して、210
3) それに 28 を足して答えは、238

である。これを使えば、

11^2 = (11 + 1) \times 10  + 1= 121\\
12^2 = (12 + 2) \times 10 + 4 = 144\\
13^2 = (13 + 3) \times 10 + 9 = 169\\
14^2 = (14 + 4) \times 10 + 16 = 196\\
15^2 = (15 + 5) \times 10 + 25 = 225\\
16^2 = (16 + 6) \times 10 + 36 = 256\\
17^2 = (17 + 7) \times 10 + 49 = 289\\
18^2 = (18 + 8) \times 10 + 64 = 324\\
19^2 = (19 + 9) \times 10 + 81 = 361

なんて暗算できる。受験参考書がなんでも暗記させようとするのは、過程を理解してより根本的で役立つことに触れさせることから隠蔽するためなんだろうかと疑いたくなる。

乗法なんかでも、素数を考えてするのとしないのではセンスに大きな差がでるが、そんな基本的なことを注意してくれる受験参考書はなかった気がする。たとえば、素数 52 があれば、その積は 10 で簡単になるとか、11 との積は簡単に計算できるとかである (ただし、日常生活で、自分の誕生日は素数だと自慢したり、「  2^2 \times 3 \times 5^2 円ください」とかするのは度をこしていると思う)。

次の問題は、灘中の算数入試問題であるが、さすがに素数をいつも意識していますか、という問題になっている。

【問】
次の x を求めよ。

 \displaystyle{\left(\frac{1}{11} - \frac{1}{183}\right) \div 43 = \left(\frac{1}{x} - \frac{1}{671}\right) \div 167}

【答】
まず、「落ち着け、素数を数えるんだ」で素数を確認する。 n が素数であるかを判定するには、 \sqrt{n} 以下の数字で割り切れるかである*1 11 は素数、 183 = 3 \times 61 で、  61 3 でも 7 でも割りきれないので素数。 43 も同じようにして素数。 671 = 11 \times 61 167 は、 7 11 で割り切れるかだけ確認すればよいが、たとえば、 7 で割り切れるかの判定方法*2を知らなくても、法  7 で、

 167= 160+7  \equiv 160 \equiv 20 \equiv 6

みたいにして確認すればよい。 167 は素数である。

以上から、

 \displaystyle{\left(\frac{1}{11} - \frac{1}{3 \times 61}\right) \times 167 \\= \left(\frac{1}{x} - \frac{1}{11 \times 61}\right) \times 43}

 \displaystyle{\left(3\times 61 -11\right) \times 167 \\= \left(\frac{3 \times 11 \times 61}{x} - 3\right) \times 43}

\displaystyle{ 172 \times 167 = \left(\frac{3 \times 11 \times 61}{x} - 3\right) \times 43}

 \displaystyle{4 \times 43 \times 167 = \left(\frac{3 \times 11 \times 61}{x} - 3\right) \times 43}

 \displaystyle{3 + 4 \times 167 = \frac{3 \times 11  \times 61}{x}}

 \displaystyle{671 = \frac{3 \times 11  \times 61}{x}}

 \displaystyle{11 \times 61 = \frac{3 \times 11  \times 61}{x} }

 x = 3

である。

*1:したがって 10 以上  100 未満の数字が素数であるかは、奇数について  3, 5, 7 で割り切れないかである。 5 で割り切れるかはすぐわかるので、 3, 7 で割り切れるかを確認すればよい。

*2:167 = 10 \times (16 - 2 \times 7) + 21 \times 7 だから、 16 - 2 \times 7 7 で割り切れるか調べればよい。同じように  671 11 で割り切れるかは  67 -1 11 で割り切れるかを調べればれよい。 762311 で割り切れるかは、 762 -3 = 759 11 で割り切れるかを調べればよい。 75 -9 = 66 だから割り切れる。