ときどき、塾で算数を小学生に教えることがあるが、算数の考え方は面白いものが多いなあ。前にも書いたけど、特殊算とかいわれているもの (別に特殊でもなんでもないが……) は比の活用が巧みなものが多い。中学の数学になるとこの柔軟さは失われ機械的になってしまう。図形だって合同は相似のスケール比が 1 倍の場合にすぎないってことが実感として忘れさられ別物扱いされる。ファインマンがどこかで書いていたと思うが、ニュートンの法則がそうであるとかつて思われていたように、人間がまず発見する法則というものはスケールが変わってもそのまま成立すると考えられるものである。
【問】
AさんとBさんの所持金の比は 4:1でしたが,2人とも 600 円のおこづかいをもらって2人の所持金の比が 3:1 になりました。Bさんははじめいくらもっていましたか。
【答】
二人の所持金の差は、おこづかいをもらった前後で保存されている (変わらない) ので、これを使って差をそろえることで比のスケールをあわせる *1。すると、はじめの所持金の比は 8 : 2 だったが、おこづかいを 600 円もらって 9 : 3 になった。比の 1 単位は 600 円にあたる。B さんのはじめの所持金は、2 単位だから 1200 円。
【問】
今から 2 年前、母の年令は息子の年令の 5 倍でしたが、今から 16 年後にちょうど 2 倍になります。現在の母の年令を求めなさい。
【答】
これも年令差が保存される (変わらない) ことを利用して比をあわせる。2 年前の母子の年令比 5 : 1 が 18 年後に 8 : 4 になった。比の 3 単位が 18 年にあたるから、1 単位は 6 年にあたる。母の 2 年前の年令は 5 単位で 30 才にあたるから今は 32 才。
【問】
AさんとBさんの所持金の比は 3:2でしたが,A さんが B さんに 50 円あげたため2人の所持金の比が 4:3 になりました。A さんははじめいくらもっていましたか。
【答】
今度は、二人の合計金額が保存する (変わらない) ことを利用して和をおなじにして、比のスケールをあわせる。21 : 14 が 20 : 15 に変わった。比の 1 単位は 50 円。A さんのはじめの所持金は、50 x 21 = 1050 円。
【問】
A 君と B 君の所持金の比は 1 : 3 でしたが、A 君は 50 円もらい、B 君は 100 円使ったため、所持金の比は 2 : 1 となりました。A 君の最初の所持金を求めなさい。
【答】
この場合、比合わせは簡単にはできない。
A 君の 2 倍の所持金をはじめに持っていて、100 円もらう C 君を考えると、C 君と B 君の所持金の比ははじめに 2 : 3 で、後は 4 : 1 になる。(C 君と B 君の所持金の合計は、いつもおなじになる。) 比の 2 単位が 100 円なので、1 単位は 50 円。A 君のはじめの所持金は、1 単位で 50 円。
【問】
初めに、兄と弟が持っている鉛筆の本数の比は 7 : 5 でしたが、兄が友達から鉛筆を 12 本もらい、弟は友達に鉛筆を 4 本上げたので、兄と弟の鉛筆の本数の比は 12 : 7 になりました。初めに兄が持っていた鉛筆の本数を求めなさい。
【答】
与えられた問題の代わりに次を考えればよい。
「はじめは兄と C が持っている鉛筆の本数の比は 7 : 15 で、兄が友達から鉛筆を 12 本もらい、C は友達に鉛筆を 12 本あげ、兄と C の鉛筆の本数の比は 12 : 21 = 4 : 7 になった」
鉛筆の合計はやりとりの前後で変わらないことを利用して比をそろえると、はじめが 7 : 15 で後を 8 : 14 にするとよい。これから、比の 1 単位は 12 本。はじめに兄が持っていた鉛筆は 7 単位だから、12 x 7 = 84 本となる。
【問】
A 中学とB 中学の受験者数の比は、4 : 5 で、合格者数はそれぞれ 120 人と 180 人、不合格者数の比は、5 : 6 でした。A 中学の受験者数を求めなさい。
【答】
所持金の問題とおなじように、はじめに人数比は 4 : 5 だったが、120 人と 180 人をそれぞれ引くと、5 : 6 になったと考えればよい。
120 : 180 = 2 : 3 の人数をおなじにするために、C 中学と D 中学の受験者数の比が、 はじめは 12 : 10 = 6 : 5 で、おなじ合格者数 360 人をそれぞれ引くと 15 : 12 = 5 : 4 となった問題と考える。
差はそろっているので、1 単位が 360 人にあたる。C 中学の 6 単位は A 中学の受験者数を 3 倍しているので、2 単位が A 中学の受験者数にあたる。これから、A 中学の受験者数は 720 人。
【問】
川に沿った A 町と B 町の間を船で往復したところ、上りと下りにかかった時間の比は、5 : 3 でした。上りの速さが時速 15 km のとき、川の流れの速さを求めなさい。
【答】
距離は変わらないから、速さの比は時間の逆比である。上りと下りの速さの比は、15 : 25 で、川の流れは比の 10 ÷ 2 = 5 単位分にあたる。1 単位は 毎時 1 km なので 川の流れは、毎時 5 km。
【問】
A, B 間を行きは時速 40 km、帰りは時速60 km で走ります。このとき、往復の平均の速さは時速何 km になりますか。
【答】
A と B の間の距離は変わらないから、行きと帰りの時間の比は、3 : 2 である。距離を120 km とすると速さにスケールがあうので、往復の平均の速さは、毎時 240 ÷ 5 = 48 km 。
【問】
一本 60 円の鉛筆と、一本 100 円のボールペンをあわせて 9 本買ったら代金は 740 円でした。鉛筆は何本買いましたか。
【答】
これは有名なつるかめ算。かりに鉛筆ばかりを 9 本買ったとしたら代金は 60 x 9 = 540 円。実際に払った 740 円はこれよりも、740 - 540 = 200 円多い。200 円多いのは鉛筆よりも 40 円高いボールペンを買ったせいである。ボールペンの本数は、200 ÷ 40 = 5 本で、鉛筆の本数は 9 - 5 = 4 本。
【問】太郎くんの家から学校までは 3.5 kmです。ある日、太郎くんは時速5kmの速さで学校に向かって歩ましたが、途中の図書館からは時速 10 kmで走って学校に向かったところ家を出発してから 30 分後に学校に着きました。太郎くんの家から図書館までの距離はいくらでしょうか。
【答】
最初から最後まで時速 10 km で走ったとすると、0.5 時間に 5 km 進む。実際には 1.5 km 少なかったので 1.5 ÷ (10 - 5) = 0.3 時間は時速 5 km であるいた。家から図書館までの距離は、5 x 0.3 = 1.5 km。
【問】
何個かのケーキを 4 個ずつ箱につめると、6 個ずつ箱につめるときと比べて 3 箱多くなるという。ケーキは何個ありますか。
【答】
6 個ずつつめた箱数に、4 個ずつつめるとケーキは 4 x 3 = 12 個あまる。ということは、 箱の数は 12 ÷ 2 = 6 箱。ケーキの数は、6 x 6 = 36 個。
【問】
何人かの子どもにあめを配ります。一人に 5 個ずつ配ると 10 個余り、7 個ずつ配ると 4 個不足する。子どもの人数とあめの個数を求めなさい。
【答】
子ども一人につき、2 個多く配るとあめは 14 個余分に必要。子どもの数は 14 ÷ 2 = 7 人。あめの個数は 5 x 7 + 10 = 45 個。
【問】ある駅伝大会では、参加チームそれぞれにお菓子とみかんの個数の比が 7:5 になるように配ると、お菓子は 5 個、みかんは 2 個余る予定でした。ところが、参加チームが増えたため、お菓子とみかんの個数の比を 3:2 にして配ったところ、お菓子は 1 個、みかんは 6 個余りました。お菓子は全部で何個ありますか。
【答】
余ったお菓子とみかんの個数の合計は、どちらも 7 個で等しいから、チームに配ったお菓子とみかんの個数の合計はどちらの場合も変わらない。これを利用して比をあわせると、はじめに配った方は 35 : 25、あとに配った方は 36 : 24 になる。比の 1 単位は余った菓子またはみかんの個数の差から決めることができ、4 個である。はじめにチームに配ったお菓子の数は、4 x 35 = 140 個で、5 個余ったからお菓子は全部で 145 個である。
【問】
一定量の水がわき出ている井戸の水をポンプですべてくみ出すのに、ポンプ 4 台では 8 時間かかり、6 台では 4 時間かかります。ポンプ 10 台では何時間かかりますか。
【答】
最初は 8 時間で 32 (台 x 時間) の水をくみ上げ、次は 4 時間で 24 (台 x 時間) の水をくみ上げた。これから、8 - 4 = 4 時間にわき出た水の量 8 (台 x 時間) をくみ上げた。これから、1 時間にわき出る水をくみ上げるには 2 台のポンプがあたる必要がある。もともと井戸にたまっていた水の量は 16 (台 x 時間) だから 10 - 2 = 8 台のポンプでは 2 時間かかる。
【問】
濃度 8% の食塩水 200g に濃度 20% の食塩水何 g かを混ぜ、濃度 12 % の食塩水を作りました。20% の食塩水は何 g 混ぜましたか。
【答】
(12 - 8) x 200 ÷ (20 - 12) = 100 (g)
【問】
ある電車が、1800 m のトンネルに入り始めてからで終わるまでに 45 秒かかり、1400 m の鉄橋を渡り始めてから渡り終わるまでに 37 秒かかります。この電車は時速何 Km ですか。また電車の長さは何 m ですか。
【答】
電車の速さは変わらないと考えると、距離の比は 45 : 37 である。45 - 37 = 8 秒は、1800 - 1400 = 400 m にかかる時間だから、電車は、毎時
400 ÷ 8 x 3.6 =360 ÷ 2 = 180 (km)
の速さである。電車の長さは、
50 x 45 - 1800 =2250 - 1800 = 450 (m)
*1:もちろん、 でかつ ならば であるということ。