再び、『アメリカから遠く離れて』に戻る。
本の中で、瀬川さんが藤田嗣治画伯の絵がジャケットの表紙になっている、コロムビアから戦前 (昭和13年) に出たシャンソン名曲集に触れられている。このレコード集はよく売れ、瀬川さんも当時お聞きになったという。それで名曲集の中から、藤田の絵のモデルになっている——代表作のひとつである「カフェにて」の女性もそうだという——リュシエンヌ・ボワイエの “Prenez mes roses” という曲を聞いた。以前、岡晴夫の『東京の花売り娘』の歌詞に出てくる「花を召しませ」や小畑実の『薔薇を召しませ』という表現はどこからきたんだろうと思って、戦前の岡晴夫の『廣東花賣娘』(昭和 15 年) にまではたどりついていたんだが、この曲の邦題が「バラを召しませ」なんだなあ。
Lucienne Boyer - PRENEZ MES ROSES
それから、本の中でも「有名な曲」として挙げられている “Parlez-Moi d'Amour” (聞かせてよ愛の言葉を) を聞いた。