ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

気晴らし (37)

近所の公園の傍を通るとユリノキに花が咲いていた。北アメリカ中部原産で日本には明治初期に種がもたらされ、東京国立博物館のユリノキはその種の一つから育ったものである。日本 (本州) の各所でも千数百万年前の化石としてユリノキが発見されているそうだが、気候の冷涼化とともに絶滅してしまったらしい。花もそうだが、葉も変わっており、先端が尖っておらず凹んでいるのはきわめて珍しい。

この木ですぐに連想されるのはサウス・カロライナが舞台のエドガー・アラン ・ポーの短編『黄金虫』(The Gold-Bug, 1843) である。チャールストンに近いサリバン島で隠遁生活を送るうちに海賊キッドの財宝のありかのヒントを得た主人公ルグランが、宝探しの過程で黒人従者であるジュピターをよじ登らせ、その高枝の先に大きな釘で打ちつけられている髑髏 (しゃれこうべ) ——財宝の埋蔵場所の重要な目印となる——を確認することになるのが、このユリノキに他ならない。ポーはそのユリノキについて話者にこう語らせている。

そのゆりの木というのは八本から十本ばかりの樫の木とともにこの平地に立っていて、その葉や形の美しいこと、枝の広くひろがっていること、外観の堂々たることなどの点では、それらの樫の木のどれよりも、また私のそれまでに見たどんな木よりも、はるかに優っているのであった。

また、こうもある。

アメリカの森林樹のなかでもっとも荘厳なゆりの木、つまり Liriodendron Tulipiferum(訳注「ゆりの木」の学名)は、若木のときには、幹が奇妙になめらかで、横枝を出さずにしばしば非常な高さにまで生長する。しかし、年をとるにつれて、樹皮が瘤だらけになり、凹凸ができる一方、たくさんの短い枝が幹にあらわれるのである。

やっとピンクのカワラナデシコを見つけた。正直、ピンクのカワラナデシコを見つけるのがこんなに大変だとは思っていなかった。自分の歩いてゆける範囲の近所を調べただけだが、淡紅色のカワラナデシコこそがまさに古くから日本に自生していた「大和撫子」であるはずなのに、こんなに育てる人が少なく、自生しているものもどんどん減少しているのは、「大和撫子」をただ現代風に言い換えただけの「ナデシコ・ジャパン」が抽象化の一途を辿っているのとどこか関係しているのかもしれない。大和市の駅前には女子サッカー選手の出身地だということで「ナデシコ通り」というのがあって、通りの名を示す標識にはカワラナデシコのつもりのような絵まで書いてあるのだが、そこを通ればさすがに道脇にはカワラナデシコが咲き乱れているのではと思って、この前の休日に泉の森を歩いたついでにわざわざ行ってみたのだが、見つけたのは瀕死のセキチク系のナデシコがたった「一花」咲いているだけで、咲いている花の多さからいえば「ナガミヒナゲシ通り」の方がぴったりであり、期待できるはずのないことを性懲りもなくどこかで期待してしまった自分を深く恥じたのだった。

クサノオウ。茎や葉を切って出る黄色の汁には各種のアルカロイドが含まれており、薬としても用いられてきたが、皮膚につくと炎症をおこすし、過敏な人は花に近づくだけでもかぶれるという。口にするのはもちろん駄目でときに死亡することもある。

これはヌカイトナデシコの花色が白のものだと思う。ナデシコ科カスミソウ属である。別名は矮性カスミソウ、ヌカイトカスミソウ (カスミソウ属の別名として初期にはイトナデシコ属が使われていたらしいのでヌカイトカスミソウは奇妙な名前に思える)。雌蕊が二本ある。1997 年に横浜市で初めて野生化したものが採取され確認されたとある。

これはキイチゴ (ラズベリー) なんだけど何だろう。