「考える人」でやっていた蓮實さんへのロング・インタビューがとうとう終わってしまった。今日の回 (第 5 回) は聞き手をつとめられたホ・ムニョン氏のインタビュー後記で、最初に引用されているのは 1996 年に東京大学出版会から出された『知のモラル』(小林康夫・船曳建夫編) の最後の「執筆者紹介」に蓮實さんが「一言」述べている懐かしい文章である。後記からそのまま引用すると、
およそ、生真面目な悲劇性ほど<知>にふさわしからぬものもまたとあるまい。何にもまして、艶やかな色気と、爽快な笑いとで<知>を軽やかに彩らねばならぬ。そして、いくぶんかの距離の意識をもって、言語にしなやかなうねりを与えること。実際、動くことを知らない<知>は、醜さと同義語にほかならぬ。
となっているが、一箇所だけ「言語」とあるのは「言葉」の誤りだと思う。
ホ・ムニョン氏が
ちょっとした操作だけで簡単に正反対側に転化してしまう一般の真理命題の凡庸と虚弱さを牽制できる唯一の姿勢である。
と蓮實さんの姿勢について書いている部分は同じ『知のモラル』にある蓮實さんの文章、
たとえほとんどの人が「戦争は悲惨だ」と思っている状況があろうと、なお戦争を準備しなければならない政治は、国家の審美主義化ともいうべき巧妙な政策によって、その正しさをあっさり「戦争は美しい」へと転化させてしまうものだからです。
(中略)
「戦争は悲惨だ」という言葉は、それがどれほど真摯な体験にねざしていようと、「一般性」の領域に形成されるものであるかぎり、ほとんど何もいっていないのとかわらないからです。
と具体的に共鳴していると思った。
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道端に白いアヤメが咲いていた。簡素で美しいなあ。
シャクヤク。
バラ。
ムギワラギクが咲きはじめている。
ヒナギク(デイジー)。