ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

オオイヌノフグリ

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送ってきた人生のその貧しさのせいで、草木の名前と実物が簡単には一致しない。近くを散歩してこれはなんだろう?と木や草を見ても名前が一緒に出てこないことはしばしばだし、小説を読んで草木の名前が登場しても実物の姿や花の香りを想像できないことが多々ある。

在宅勤務の単調さから逃れる気晴らしのために、この際、身近にある草木の名前ぐらい覚えておこうと思って、もっとも身近にある野草の名前を調べたりしている。たとえば、記事冒頭の写真はこの春の時期、その辺りの地面に無数といってよいくらい咲いている小さな青い花だが、この花を咲かせる草の名前は「オオイヌノフグリ (大犬の陰嚢)」ということを知って、暫し楽しめた。なんでも、「イヌノフグリ (犬の陰嚢)」という似た草があって、その名前は、二つのミニチュアの玉がくっついた草の実の形状から想像されたものらしい。「オオイヌノフグリ」の「オオ (大)」は「イヌノフグリ」よりも花が大きいのでこう名付けられたらしく、「大犬 (牡) のもちもの」ということではないらしい。冒頭の花の写真でも雌蕊が二本あることまでは確認できるだろう—— じつはその中央に細い雄蕊が一本ある。花びらは四枚あるように一見みえるが根元ではくっついて先の方に行く途中で四つの領域に分裂している。分裂した四つのうち一つは幅が小さく、色も白っぽいので回転対称ではないが、雌蕊と萼 (がく) も含めてほぼ左右対称にはなっている。



ちなみに「オオイヌノフグリ」の実はハート型をしているそうである。実がつくのが待ち遠しいなあ。



※ なお、在来種の「イヌノフグリ」—— 花は淡いピンク色で花柄はオオイヌノフグリに比べて短い—— は地域によってはすでにほぼ絶滅しているところもある (下図参照)。「オオイヌノフグリ」は明治中期に東京で確認され、大正期に全国に広まった欧州からの外来種である。