ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

消毒薬

トイレットペーパーやティッシュとかは論外にしても、消毒薬でも今回のウィルスに対して有効かどうかのエビデンスがなかったり、塩化ベンザルコニウムやグルコン酸クロルヘキシジンのようなノンアルコール系の消毒薬(ノンアルコール系のウェットティッシュ、消毒綿の主成分であることが多い) は、ウィルス不活性化の効果が劣るとされているのに、品薄らしい。そんなもので拭いて安心してしまう方が怖い気がする。今回のウィルスに対して効果が有望なのは——それだって完全に検証されているとは言い切れないが—— 62〜71% のエタノール、0.5% の過酸化水素、または 0.1% の次亜塩素酸ナトリウムぐらいである。つまり、昔からずっと使われている消毒用エチルアルコール、オキシドール、ハイターまたはブリーチ類である。あたり前だが、市販の除菌製品がなんでも有効ということではない。花王なんかは良心的な方で、

「ビオレu 手指の消毒液」は、(中略) エタノールも含まれておりますが、有効成分はベンザルコニウム塩化物です。なお、新型コロナウイルスへの効果は確認できておりません。

とアナウンスしている——正確にいえば、すでに述べたようにベンザルコニウム塩化物は今回のウィルスの不活性化にはそれほど有効ではないとされている。

ちなみに逆性石鹸には塩化ベンザルコニウムが配合されているものがあるが、石鹸で手をよく洗い、水道水で漱ぎ、ペーパータオルで手を拭う一連の手続き自体が有効であって、石鹸の種類は問わないと思われるので、逆性石鹸で手を洗うことは有効であると考えてよいと思う。

今日も電車に乗っている若い人が、手摺りを触りまくり、ひっきりなしにその手を顔にやったり、携帯電話をいじっていたが、そういう大胆な人を見ると感染していることを前提にしてしまう。また、アルコール消毒液が手に入りにくくなっている現状で、その携帯電話、何で拭くつもりだろうとも思ってしまう——ちょっとハイターでは拭きにくい。

※ 追記:イソプロピル・アルコールはまだ手に入るので、純度の高いものを精製水で割って 70% にして拭けばよさそう。このアルコールはエタノールと違い油脂も比較的落とせる(しかし、その性質のため手が荒れるので手指の消毒には向かない)。なお、メガネのレンズクリーナーや洗剤に含まれる界面活性剤の使用でもウィルスのエンベロープ (脂質二重層) ぐらい簡単に壊せそうだが、界面活性剤が携帯電話の防水機能——といってもいろいろな防水グレードがある——を低下させ、水分が機器内部へと浸透しやすくなる怖れがあり使用は避けた方が無難と思われる。//

前にも触れたが、季節性のインフルエンザのようにすでに多くの人が抗体を持っている状況ではない。昔よくいわれていたインフルエンザの流行は環境の絶対湿度に相関するとかではなく、抗体がほとんどない状況で、どこで蔓延してもおかしくないし、致死率の平均値も実のところ大した意味はなく—— 一般に平均値だけで統計をみるとしばしば判断を誤る——年齢や持病をもっているかの個々人の条件の差や、病院の能力に余裕があるか、感染者が増えて病院がパンクするかどうか、日本のように医療が優れているか、新興国のように医療のリソースが限られているか、その他様々なパラメータで、致死率は局所的に大きく変わってくる。どこかのお他人様の国の大統領が言うような、インフルエンザよりも現状死者数が少ないから大したことないなんてのは、単なる気休めに過ぎない。ビジネスでいえばすでに多くの顧客を獲得したものと、これから新規にキャズムを超えて急成長する蓋然性が高いものをごっちゃに論じるのは、もともと性格が異なるものに対して単純な比較を当てはめているだけである。