ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

ベトナム語の発音 (2)

ベトナム語の発音と綴りの関係が面白いので引続きあれこれベトナム語の音を聴いていた。

音節頭の子音の発音 [k] は文字 c, k, q で綴られているけれど、明確な規則性があって、後に続く母音が後舌母音ならば c で綴られているし、後に続く母音が前舌母音なら k で綴られており、さらに一種類しかない介音 (渡り音) /w/ が続く場合には q となっていて、これは非常に簡単である。同じように、[ɣ] の gh (前舌母音) / g (後舌母音) の綴りの関係もそうだし、[ŋ] の ngh (前舌母音) / ng (後舌母音) も同じ関係だ。

介音の発音は /w/ しかないが、綴り文字としては o と u の 2 種類を取りうる。すでに述べたように頭子音が q ならば無条件に u が続くので簡単である。その他の場合は後続する母音で決まる。まず後舌の円唇母音の前に介音がくることはない。非円唇の母音の中で ư [ɯ] のみは、その前に介音が立つことがない。ư [ɯ] を除く非円唇母音で口をもっとも開く母音 (つまり、a / ă, e) は介音の文字として o をとり、それ以外は u をとる。なお、ベトナム語では二重母音の発音としては /iə/, /uə/, /ɯə/ の三種類だけだが、介音を取り得る二重母音は /iə/ だけである。

三種類の発音しかない二重母音の綴りも、非常に簡単な規則性がある。つまり /iə/ の場合だと開音節では、ia と綴られ、閉音節では iê (yê) と綴られる。/uə/ だと、開音節では ua, 閉音節では uô と綴られる。最後に /ɯə/ だと、開音節では ưa, 閉音節では ươ と規則正しく綴られる。つまり、最初の文字は母音図各列の口の開け方のもっとも狭い音であり、開音節では二番目の文字は常に a となり、閉音節では最初の母音の一つ口の開け方の広い中段の母音文字がつかわれる。

閉音節の音節末尾については「半母音」として /w/, /ʝ/ を取りうるので注意が必要である。 /ʝ/ は英語でいえば、yes, yet の y の発音に相当する。前に後舌の円唇母音がくれば、 /ʝ/ がくるし、前舌母音であれば /w/ がくる。後舌の非円唇母音であれば /w/, /ʝ/ の両方をとる。

二重母音の場合、最後に半母音がくると二重母音の発音が変化するので特に注意が必要である。綴りが iê の場合には /w/ が続き、この場合は二重母音の最初の母音が短母音となり次の母音が長母音になる。つまり i が短母音になり ê が長母音になる。綴りが uô の場合には /ʝ/ が続き、この場合も二重母音の最初の母音が短母音となり次の母音が長母音になる。つまり u が短母音になり ô が長母音になる。綴りが ươ の母音には /w/ と /ʝ/ の両方の可能性がある。また二重母音の長短が逆転するのはいままでの説明と同じである。

/ʝ/ の綴りは i または y で、y になるのは前の母音が â または ă の短母音の場合のみであるが、この場合 ă は単に a と綴られることに注意が必要である。つまり、ay の a は短母音である。

/w/ の綴りは u または oで、o になるのは前の母音が a または e の非円唇母音でかつ一番口を広くあける母音の場合のみである。なお短母音の ă の場合は au と表記されるので注意が必要である。ao の a は長母音、au の a は短母音である。



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