旅のおわり世界のはじまり

総天然色シネマスコープにアップされる前田敦子 (若尾文子の映画が好きという) が山の頂きで突然歌い出す「愛の賛歌 (Hymne à l'amour)」にこれほどまで泣けるとは!『めまい』(1958) のように酔いしれ、『カリフォルニア・ドールズ』(1981) のように泣ける作品である。学生時代に黒沢清の自主映画をはじめて見たときのような自由の風を感じた。ただ、ほとんど 40 年前のその時はこんなにうっとりし、こんなに泣かなかった。二重内陸国ウズベキスタンでロケーションし、夏の夜のロカルノ、ピアッツア・グランデ広場の巨大野外スクリーンにクロージング上映されることも決まったという。港町が海のネットワークだとすれば、シルクロードの街は陸のネットワークである。歴史の時間と世界の空間が交錯する場所で、日本を軽々と越境したスタッフや出演者が、潜在的ななにかを徐々に解放していく持続を見事に画面に定着し、歌の力を生み出すことで、新たな日本映画を創造した。映画館の大きなスクリーンに抱擁されるのに、これ以上ふさわしい作品があるだろうか。

Édith Piaf:

Celine Dion:

越路吹雪:

岸洋子:

Vera Lynn: