ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

東京キッド

これはさすがに昔見ているが、斎藤寅次郎監督の『東京キッド』(1950) を見る。この作品はいま見ても大変面白く、当時大ヒットしたのがよくわかるし、13 才の美空ひばりが、すでに卓越した歌手であることもわかる作品だ。二回歌われる仁木他喜雄が編曲した、あまりにも有名な「東京キッド」。

※ 3番もある。

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※ 仁木他喜雄が編曲したひばりの曲は五曲ほど残されている。以下は 1955 年のもの。両曲とも作曲は山田耕筰によるもの。



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ひばりの最初のヒット曲 「悲しき口笛」(1949) はこの作品でも何度も歌われる。師匠である川田晴久がギターで出だしを弾き出すと、まずひばりの歌声だけが聞こえ、最後にひばりが画面に登場するという演出になっており、そこでは曲にあわせて、今度は榎本健一が踊る場面もある。この映画のエノケンは見もので、副業として菓子屋を始め、胃散のおまけ付きアイス・キャンデーを子供達に売っていて、歌が流れだすと必ず踊りだす占い師の役を演じている。あのヒゲや帽子はマルクス兄弟の影響かもしれない。

川田晴久と輪タク、ボートに乗っている場面でそれぞれ歌われる 「ひばりが歌えば」。

「浮世船 (航) 路」

「湯の町エレジー」と「トンコ節」は絶妙である。

他には、花菱アチャコ、堺駿二、坂本武が出演しているのが嬉しいし、当時ですら人力車 (南アジアで現在見る自転車付きのリキシャで「輪タク」と呼ばれている) が走っていることに驚く。ゴム跳びをして遊ぶ女の子を最近、まったく見なくなったことにも気付かされた。なお、美術は小津作品も手掛けた濱田辰雄である。