萩原徳三監督の『娘船頭さん』(1955) とマキノ雅広監督の『彌太郞笠 前後編』(1952) という戦後の日本映画第二の黄金期の作品を続けて見た。
初見だった『娘船頭さん』は、ワカサギを帆曳き網漁 (風力を利用して網を引っ張る漁、今では観光用に存在するのみ) する素晴らしいシーンがあって、その風を受けて船の白い一枚帆が満々とアーチを描いて膨らんだ美しい様を陰影豊かにモノクロで捉えた撮影がとくに記憶に残る。同じように帆曳き船が登場する作品として今井正の『米』(1957) があるが、この作品はそれよりも早い時期のものである。
『彌太郞笠』は再見。マキノ雅広のクルリとダンスのように人物を振り返らせたり、立ち位置を変えたり、アクションつなぎをする映画作法はいまさら述べるまでもないだろう。女性の場合は、繋ぐときにはコマを重複させ (動作を少しダブらせ)、男性の場合はコマ抜きする (動作を少し省略する) のがコツだそうである。最近はむしろアニメの方が余程こういう繋ぎ方に対して意識があるなあ。岸惠子の手まで照明が美しく当たっている。