バングラデシュから帰る飛行機で『ボヘミアン・ラプソディ』(2018) を見たが、高校時代にこの曲を合唱して歌詞を未だにほとんど覚えていて懐かしかったためである。その曲が納められているアルバムのタイトル “A Night at the Opera” とあの口髭から、当然ながら、サム・ウッド監督が MGM で撮ったマルクス兄弟の代表作である『オペラは踊る』(1935) を思い出していた。
それで、帰国してから、初日には間に合わなかったもののクリント・イーストウッドの 10 年振りの監督、主演作である『運び屋』(The Mule, 2018) を見に行った。同じ 1930 年生まれであるイーストウッドとゴダールの新作がほぼ同時期に見られるなんて、なんという僥倖であろう。蓮實さんは両方の作品のコメントに「異様な」という言葉を使っている。クリント・イーストウッドの監督作品を本格的に映画館で見始めたのは、1980 年に見た 159 本目にあたる 『ブロンコ・ビリー』(1980) からである。
ドン・シーゲル監督でクリント・イーストウッドとシャーリー・マクレーンが主演した 『真昼の死闘』(1970) の原案は、バッド・ベティカーらしいが、原題は
“Two Mules for Sister Sara” であった。“mule” には「頑固者」という意味もあるので、“Two Mules” の一匹 (人) は、明らかにイーストウッドのことであった。また、この映画で、インディアンに矢を射られて傷ついたイーストウッドが矢を抜くシーンで歌っていたことを思い出した。
以下は、『運び屋』で使われていた音楽の一部であるが、演奏者は作品のものとは一致しない。
1939:
El Rancho Grande (Bing Crosby)
1941:
Cool Water (The Sons of the Pioneers)
1943:
Ugly Chile (George Brunis)
1948:
Cool Water (Vaughan Monroe & The Sons of the Pioneers)
1960:
Ain't That a Kick in the Head? (Dean Martin)
1962:
I've been everywhere (Hank Snow)
1964:
Dang Me (Roger Miller)
1969:
More Today Than Yesterday
(The Spiral Starecase)