ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

女子学生比率

東京大学の総長室だよりなるものを読んでいたら次のような記事があった。

パネル討論の終盤で、蓮實先生から、東大生の男女比の偏りが一向に改善されていない、女子学生枠を設けてでも是正すべきというコメントが突然飛び出しました。少々戸惑いましたが、これは私も常々考えている課題です。東大を受験しなかった優秀な女子学生が東大を志願するようになれば、女子学生比率はもちろん、全体のレベルも必ず上がるはずだと発言しました。蓮實先生は総長として、東大の男女共同参画に先鞭を付けられました。それから20年、教員や学生の女性比率は多少改善はしているものの、効果は限定的です。東大で学ぶのに相応しい学生は男女を問わず多くいるのに、学部の受験者・入学者の男女比が大きく偏っているのは、本来東大で学んでほしい学生を十分惹きつけられていないことを意味します。海外の有力大学では男女比はほぼ半々ですし、東大でも留学生の女性比率はずっと高いのです。海外で活躍する方々からは、今の女子学生比率の低さは問題だ、国際社会から東大は遅れていると見られる、と言われます。これは、東大にとって深刻で、早急な対応が必要です。

これに類する話は最近よく聞く話であり、ここでなにかコメントをしたいということではないが、ただ前回の記事で出た濱口竜介監督の『ハッピーアワー』を思い出して入学比率を上げればそれで済む話でもないだろうと思っただけである。この映画、30代後半の女性4人が主演を務めており、この世代の女性達を起用したことが珍しく僕に映画の内容自体に関心をもたせた。このことは、濱口監督自身がインタビューで実に適切に述べている。

参加者の中に当時30代後半の女性が4人いたんですけど、この年代の女性は、社会的に弱い立場にあるように思いました。まず出産に関するタイムリミットをすごく意識しなきゃいけない時期でもある。でも、社会の側からの彼女たちのサポートはまったく万全ではないから、彼女たちは自分のキャリアをどうするのかについて選択を迫られる。そして否応なく、いわゆる「容貌が衰える」時期でもある。でも、女性においてそのことが特に問題になるのは、明らかにこの社会が男性社会だからです。20代の頃には求められなかったような形で、自分の体と社会から選択を迫られているんだと思います。本当は彼女たち個人の選択とは言い切れないものなのに、社会は素知らぬ顔をしている。彼女たちはサポートなく放り出されている。そういう、すごく微妙な年代ではあるわけですよね。

映画の中では看護師である「あかり (田中幸恵)」も出てきて、自分が働いている業界だけになお一層関心が深かったのである。医療で言えば、次の記事を読めば女性医師も同じ状況であろう。

でもこういうことを男はなかなか分かろうとしない。そのことを濱口監督はまたしても自身で適切にコメントしている。

例えば家庭を守ってきたまじめな妻の浮気が理解できない夫がいる。自分は何も悪いことをしていないのにと夫は思う。男性が外で働くことを促す社会構造によって、男性は自身の役割を果たしていると思いがちです。彼らの家庭やパートナーへの無関心は社会によって正当化されてしまう。僕も含めて、この社会においては男性であるというだけで自覚できない事柄が絶対にある。だからとてもかわいそうだという気がしました。

 

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