ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

一人二役の映画

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雑誌ユリイカの濱口竜介監督 ——『ハッピーアワー』(2015) と『寝ても覚めても』(2018) しか見たことがない——の特集号を初めて読んだけど、冒頭の蓮實重彥さんとの対談で、イメージの類似を扱った映画の例として、ヒッチコックの『めまい』(1958) を蓮實さんが挙げているのは当然として、もう一本、プレストン・スタージェスの『結婚五年目』(The Palm Beach Story, 1942) を挙げていて、あれ?と悩んでしまった。一人二役の人物なんて出てきたっけ? これは、同じスタージェス監督の『レディ・イヴ』(The Lady Eve, 1941) の間違いだと思う。これだとイカサマ賭博師のバーバラ・スタンウィックが淑女イヴになりすますという設定がある。『結婚五年目』は二年ほど前に DVD で見直したので間違いないと思うけど機会があれば確認しよう。

 

※ 訂正: これは自分の間違いで『結婚五年目』のトムとジェリーは, それぞれ双子という設定になっており, 最後の結婚式の場面でジョエル・マクリーとクローデット・コルベールのイメージがそれぞれ二重化されている. //

 

ところで、『結婚五年目』はジョエル・マクリーとクローデット・コルベールだけれど、もともとはキャロル・ロンバードを想定して脚本が書かれたという。不幸にもロンバードが飛行機事故で亡くなり、急遽コルベールが代役を務めた。

下のクリップは『結婚五年目』のもので、ここは Rudy Vallée が歌っているところがあって確かに貴重だが、ジョエル・マクリーがコルベールのドレスの背中のホックを外すシーンとしてはもっと良いシーンがあってそっちの方がずっとずっと好きなんだけど、YouTube からは削除されてしまったようだ。残念。

※『結婚五年目』について
出演は、クローデット・コルベール、ジョエル・マクリー、メアリー・アスター、ルディ・ヴァリー他。プレストン・スタージェスは脚本も書いている。なお、船着き場のシーンで、コルベールが前の場面でした買い物の大量の箱を独身の大富豪 (ルディー・ヴァリー) が所有する大型ヨットの乗組員たちが両腕に抱えて運んでいるところを比較的長いドリーで撮影しているところがあるが、そのときコルベールの背後にいる一人がスタージェス監督自身である。

ジョエル・マクリーとクローデット・コルベールの結婚式に至るまでが、冒頭わずか二分ほどの間に語られ、そこから五年経った後が実は本題という展開が面白い。物語に登場する人物はみな変人ばかりで、まともそうな人物設定は一人として出てこない。最初から「ウィニー・キング」と呼ばれるおかしな老人が出てくるし、主役のマクリーの役名は「トム」で、コルベールの役名は「ジェリー」である。

 

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