ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

/æ/ と /ɑ/

英語だと lingerie の発音は、/lˈænʒri/ で 綴字の i を /æ/ で発音するが、米語では /ɑ/ であるので、a 以外の文字で、/æ/ になるのは、彫刻家の Rodin (/rˈoʊdæn/ であるとか、「音色、音質」を意味する timbre(/tˈæmbɚ/) ぐらいの少数の単語に留まる。つまり、米語の場合、/æ/ の発音は、大部分(99%以上)文字 a に現れるのであり、そういう意味では例外が少ない。もちろん、文字 a 自体は様々に読まれるので逆は成り立たない。文字 a を「あ」に類した音で強勢をつけて発音する場合は、/æ/か、/ɑ/ のどちらかで、/æ/ の方を基本に考えればよい。

1)  語末が “ a  + 子音 + (a / i / o)” 
英語にとって外来語であるような場合、語末が “ a + 子音 + (a / i / o)” を取ることが多い。この場合、子音の前の a に「強勢」があれば、 /ɑː/ を基本にして読めばあっていることが多い。ただし、米語として身近になった単語ほど /ɑː/ ではなく、/æ/ や /eɪ/ が使われるケースが増えると思う。米語で /ɑː/ であまり発音しない場合として、

banana, tomato, piano, data 

が挙げられるが、別に /ɑː/ で発音しても英国式であり通じないことは全然ないと思うので、外国人話者としてはそんなに神経質になることもないと思う。
※ 英国式でも /ɑː/ と発音しない例外としては alpaca, Havana, Clara, Diana などがある。
※ その他語末が e で終わっているフランス語からの借入語でも /ɑː/ が発音される場合がある。例: ballade, garage, massage, sabotage 

2) 渡り音 /w/の後の a の発音
/ɑ(ː)/ で読むのが基本である。 

want, wander, quality, swallow, water, waltz, 

ただし、次のものは /w/ の後でも /æ/ で読むので注意が必要である。

swam  (cf. swamp), swank   (cf. swan), wax, wagon, wacko, wacky, quack, swag, wangle, whack

上のリストで swim の過去形である swam は例外に近いが、その他は、/k/ か /g/ か /ŋ/ のような、軟口蓋子音が続く場合である(swank の n の発音は、k が後にきて /ŋ/であることに注意)。/w/ で口を丸める影響と、後続の軟口蓋音の発音の準備が相殺されて、自然にもとの/æ/で発音されるのだと思われる。

3) al の後に f または m が続いて l が黙字になる場合
使い分けはよくわからないが、/ɑː/ と /æ/ の場合がある。 

/æ/: salmon, half, calf, behalf
/ɑː/: almond, calm, palm 

4) r の前の a
・r が語末文字であったり r  とは異なる子音字が続く場合は /ɑ/ で発音する。 

car, mar, par, bar, far, jar, fir,  art, charge, dark, march, part, scarf, apartment, Darling 
※ scarcely は /e/ で読む。また米国発音であるにもかかわらず r-linking せず r を /ə/ で読むときさえある。 

・arr のように r が 2 回続く場合はほとんどの場合、 /æ/ で発音する。

carrot, carry, marry, barrier, carriage, carriers, narrative, marriage, narrow
例外: bizarre (フランス語) 

・ar の次に母音文字が続く場合は /e/ または /æ/ で発音する。

/æ/: Carol, comparison, clarinet, caravan, marital, parasol
/e/: fare, compare, declare, snare, share, spare, rare, area, malaria, parent, Ontario, various, scenario, vegetarian, canary
※ parent は例外だが 、r の後が e で語が終わっているか、母音字が 2 文字続いている場合は /e/ であることが多い。

5) father (/fɑːðɚ/)
例外的。 

※ 「あ」に類した音の場合ではないが特に以下のものをあげておく。

6) al で /ɑː/ と発音する場合
almost, also, already, always, cobalt, salt, call, all, ball, altogether, false, Bengal, scald, Nepal

7) au, aw, augh で /ɑː/ と発音する場合applaud, astronaut, author, automn, sauce, trauma, awful, awkward, jaw, raw, saw, yawn, caught, daughter

 これには以下のような例外がある:

/æ/ または /ɑː/ : aunt, laugh
/eɪ/: gauge
/oʊ/: chauffeur, mauve, gauche, causerie
/aʊ/: gaucho 

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以上 7 つのケースを示して、完全ではないながらも発音の使い分けを示した。なお繰り返しになるが強勢のかからない音節や二重母音で発音する場合は全然別の話である。