聴覚過敏になると嫌なので /l/ と /r/ の違いを日本人がわからないというのは、「わかりやすさ」からくる嘘に過ぎないというところから始まった一連の記事はここで唐突にまとめて終えることにする。
そもそも /l/ と /r/ の音がどう違うかはすでに研究結果が報告されている。下のリンクがよくまとまっていて、個人的には一番よくわかる。
上のリンクに音声ファイルがついているので一番左側と一番右側のものを聴き較べて見れば、/r/ と /l/ の一番大きな違いは、グラフに F3 とある三つ目の共鳴の山 (フォルマント) にあることが確認できる。つまり音のキンキンしたところに集中すれば両者の聴覚イメージの違いはわかるはずである。もっとも留意すべきことは、この共鳴の山の絶対的な音の高さはあまり問題でないということである。つまり語頭の /l/ は次に続く母音のキンキンした部分 (F3) の高さに合わせて音の高さ自体は変化するのである。なにをいっているかというと、/l/ の F3 は音の高さを続く母音の F3 のそれとほぼ一致させ、それは子音 /l/ の発音の始まりから終わりまで持続させるということである (もっと厳密に言うとグラフにあるように、/l/ の F3 の高さは母音の F3 の高さを下回ってはならないということである)。一方、/r/ の F3 の高さは母音の F3 の高さよりも低く始まりそれをそれが母音の F3 の高さまで連続的につなげる。この特徴によって /l/ と /r/ はたとえ話者が違っていても聞き分けることが可能である。