ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

英語の勘所 (10)

英語の文章を読むには、並列構造の把握が重要ってことを前回書いたつもりだが、同格構造の把握っていうこともあるだろう。たとえば、前に取り上げた “The Great Gatsby” から例を取ってみる。

In consequence, I’m inclined to reserve all judgments, a habit that has opened up many curious natures to me and also made me the victim of not a few veteran bores.

これなんかよくある形で、a habit が前の文章と同格になっている (a habit の前の which is が省略されていると考えてもいいだろう)。下の例なんかも、なんで非制限用法がないはずの that の前に  ” , “ がつくの?なんて考えちゃいけない。

He talked a lot about the past, and I gathered that he wanted to recover something, some idea of himself perhaps, that had gone into loving Daisy.

下の例は、映画研究家の Adrian Martin が書いた文章だが、このタイプの同格表現の高度な例だと思うので挙げておく。元の文章は以下にある。

A train advances toward us, drawn by a steam locomotive, and slows down at the end of the platform of a small station’ – so begins Shigehiko Hasumi’s 2004 text ‘John Ford, or The Eloquence of Gesture’.  Note the complete absence of technical language: no mention of long shot or close-up, no talk of the camera lens, the angle, or even the framing of the mise en scène. Simply, an event, an event on the screen: a train advances … with the casual inclusion of the spectator’s position, that ‘us’ which constitutes the point of reception for this film, for any film

 よく同格の that の説明を読むと、使える名詞が限定されていて "picture" のような名詞に同格のthat は使えないなどと書いてあるものがあるが、下の例を見て欲しい。

Putting the evidence together paints a very strong picture that expanding insurance substantially improves the well-being of people who get it.

このような同格表現で、that 節の直前に置かれる名詞は、shell noun と呼ばれることが多い。日本語の「~のこと」「~のもの」の「もの」「こと」は、shell noun とよく似ている。英語でこれに対応する単語 "thing", "fact" に類する単語は、典型的な shell noun となる。shell noun の由来は、言葉自体には単純な抽象的な意味しかない殻のようなもので、中身については節の中で具体的に述べられるところから来ている。shell noun が日本語でも英語でも頻繁につかわれるのは、文章の組み立てが容易になり、shell noun 自体も一般的な抽象的意味をもっているので、話す方も言葉を組み立てやすく、聞く方もイメージが沸きやすいというところからきているのだろう。したがって shell noun として単純な意味の抽象名詞が採用されやすいということはわかるが、だからといって使える名詞の集合ははっきりと決まるというものではなく open class (開かれた集合)というべきものであろう。辞書に出ているのは、比較的同格表現をとりやすい使用頻度が高いものがあげられているだけである。仮に一般にはつかわれない名詞でも、特定の集団や論文などの表現では、その村の中で頻度高く使われて常識化した語であれば shell noun になることは十分ありえると思う。

前に使った例文を再びあげる。

Experts said the study, which was published online Monday in the Annals of Internal Medicine, will not settle the long-debated question of whether being insured prolongs life, but it provides the most credible evidence yet that it might.

この例では、question では 同格の of を使っている (of は省略してもいい)。 一方、the most credible evidence yet that it might は、might 以下が省略されているが、evidence が that の同格表現をとっている。基本的に動詞形が that 節をとれるのであったら、それを名詞化した場合には that を同格として取ることが可能であろう。例としては、以下の動詞派生の名詞である。

conclusion, knowledge, insistence, information, assertion, comment, discovery, announcement, thought, guess, hope, promise, advice

動詞の形がはっきりしない一般の名詞も含めて、同格表現に that 節を使うのか to 不定詞を使うのか、of Ving の動名詞の形をつかうかを判断するには、前に書いたような動詞の補語として to 不定詞をとるのか ing 動名詞をとるのか、はたまた that 節をとるのかを選択する際の感覚と極めて似ていると思う。たとえば、fact に類する名詞が that 節をとるのは、結局、客観的事実を記述するからである。evidence も事実が真だということを主張するためのもので、that 節をとる。次のような例で of -ing の形になるのは動詞の補語として ing 形をとる感覚とほぼ同じである。

I made the mistake of inviting Jennifer to the party.
experience of learning and teaching
She left no trace of having been there.