ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

雨に唄えば

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YouTube で “More Than You Know” を検索していたら同名の別の曲である Axwell / Ingrosso のものが山のように出てくるので、こちらもついムキになって由緒正しい “More Than You Know” をほとんど全部検索してまわるという大人気ない振る舞いに出てしまったのだが、だいたい人それぞれで好き嫌いがあっていいはずの曲の視聴回数が 2 億回を超えていることが気味悪くてゾッとする。そういえば、前も似たようなことがあって、Rosemary Clooney 自身はこんな Childish な歌を歌うのは嫌いでしょうがなかったという “Come on-a My House”  をちょっと聴きたくなって調べると「平成の時代を高く跳躍する」という、こちらまで何か気恥ずかしくなるような名前をもつグループが、ローズマリー・クルーニーや江利チエミが歌った曲とまったく同名のタイトルの歌を唄っていながら、なんの記憶も留めていないことに唖然としたものだった。さすがに視聴回数はローズマリー・クルーニーの曲の方が上だったけど。そういえば、“Come on-a My House” は、1951年にローズマリー・クルーニーがヒットさせた曲であるが、実は 1939 年に最初に発表された曲であり、ローズマリーは過去の埋もれた曲をヒットさせたのだった。

ローズマリーが気を悪くしないように江利チエミの『カモンナ・マイ・ハウス』をアップしておこう。彼女が 15 歳で『テネシー・ワルツ』でデビューしたときのレコードの B 面の曲だから Childish でもギリギリ許してもらえるだろう。

閑話休題。

Annette Hanshaw のところで 1929 年の曲として “Singin' in the Rain” をあげているが、この曲は MGM の1929年、つまりトーキー最初期の映画である “Hollywood Revue of 1929” に使われたのが始まりであることを補足しておきたかった。もとの映画の映像も残っているが、スタンリー・ドーネン監督やジーン・ケリーがいかに偉大であったかということを改めて認識するだけの出来なので MGM の名誉のために紹介しない。Hanshaw 以外にも 1929 年だけで、この曲の様々なレコーディングが存在するが、ドーシー兄弟の楽団のものだけの紹介に留める。

1952 年の MGM 映画『雨に唄えば (Singin’ in the Rain)』(スタンリー・ドーネン監督) の挿入曲は、ジーン・ケリーによる誰でも知っている名高いシーンであるがあえて紹介しておく。映画で数多くの雨が降ったけど、さすがに MGM の底力のようなものが伺える見事なものだと見直して改めて感心した。ジーン・ケリーが手を拡げたときにキャメラが寄っていくが、そのとき雨が一本一本見事に光っているところなんか見て欲しい。雨の場面では、人物照明以外にも雨の照明設計が別に必要となる。