前の記事でジル・ドゥルーズの『差異と反復』(Différence et répétition, 1968) の冒頭を引用した後、その続きをしばらく読んでいた。なんでこの本、何度読んでもこんなにおもしろいんだろう。例えば、冒頭から続く次の一節。
祝祭というものには、「再開不可能」なものを反復するという明白なパラドックス以外のいかなるパラドックスもない。一回目に、二回目、三回目を加算するというのではなく、第一回目を「n」乗するのだ。このような「力=累乗」の「関係=比」のもとで反復は、内化されることによって転倒させられるのである。ペギーが言ったようにバスティーユの攻略を記念するあるいは表象=再現前化するのが連盟祭ではなく、まさにバスティーユ攻略が諸連盟をまえもって祝いかつ反復するのである。あるいはまた、モネの最初の睡蓮こそが、他のすべての睡蓮を反復するのである。
見事というしかないこの短い部分にドゥルーズ特有の概念操作が明確に示されている。まず、「加法」が演算として与えられた空間から「乗法」が演算として与えられた「強度空間」に移行している 。そして、その移行の際には継起的な「順序構造」は失われているはずで、これはリゾームの一歩手前である。数学的な用語を定義せずに無暗に援用しているという批判もあろうが、これは創造の途中プロセスとして集合に導入されている関係に別の関係を導入して新たな空間として既存のものを捉え直してみるということだと思う。
人はその「順序空間」と「強度空間」の間は、どんな関係によって接続されているのかを問うてみることができる。蓮實重彥が行なった「説話論的体系」と「主題論的体系」はまさにこの線に沿って発展させたのではと思っている。「主題論的体系」は明らかに「意識」の代替として導入したのである。
閑話休題。服部良一が作曲した『草津ジャズ』。1936 年のコロムビア・ジャズ・バンドによる演奏。
- 作者: ジルドゥルーズ,Gilles Deleuze,財津理
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1992/11
- メディア: 単行本
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