ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

ドロレス・デル・リオについて(4)

ノーマン・フォスター監督の『恐怖への旅』(Journey Into Fear, 1942) は、ジョセフ・コットン、オーソン・ウェルズ、ドロレス・デル・リオ他が出演した作品であるが、タッチはどう見ても冒頭からウェルズが演出した作品である。正確な理由はわかっていないが「中断の天才」オーソン・ウェルズが演出を途中放棄したのである。ウェルズは、1941 年に処女作『市民ケーン』を撮って、1942 年は『偉大なるアンバーソン家の人々』とこの作品が同時進行であった。さらに、南米との親善のために企画されたオムニバス映画『イッツ・オール・ツルー』の撮影のために南米にも出かけている。ウェルズが南米にいっている間、RKO が作品の完成していない部分の撮影と編集を進めてしまったことに腹をたてて放棄したのではないかともいわれているが、本当のところはわからない。なお、編集は監督になる前のマーク・ロブソンが行っている。結局、『イッツ・オール・ツルー』も製作中止となり、完成させたのは『偉大なるアンバーソン家の人々』(The Magnificent Ambersons, 1942) のみであるが、それとても編集には関わっていない。そして、この後、ウェルズは RKO から追放されてしまう。 

『恐怖への旅』は、ドロレス・デル・リオがフィルム・ノワールに出演した作品として記憶している。下にある最初のナイトクラブのシーンでのデル・リオの衣装を見て欲しい。68 分という上映時間が本来のものであるとはとても思えないが、画面は簡潔でとても引き締まった作品になっている。

ドロレス・デル・リオとオーソン・ウェルズの関係は 1940 年の『市民ケーン』の前に始まり、それがもとで、デル・リオはセドリック・ギボンズと離婚している。ウェルズが南米に行っている間に二人の関係は終わったといわれる。彼女はこの後、メキシコに戻りメキシコ映画の黄金時代を支えることになるだろう。

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