ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

雑記

竹取物語 (3)

霜月極月のふりこほりみな月のてり はたゝくにもさはらすきたり此人々ある ときは竹とりをよひ出してむすめを 我にたへとふしおかみ手をすりの給へはを のかなさぬ子なれは心にもしたかえすと なんいひて月日ををくるかゝれは此人々家 にかへりて物を思ひ祈…

竹取物語 (2)

此ほと三日うちあけあそふよろつのあそ ひをそしけるおとこはうけきらはす よひつとへていとかしこくあそふ世界の をのこあてなるもいやしきもいかてこの かくやひめをえてしかな見てしかなと をとにきゝめてゝまとふそのあたりの かきにも家のとにもをる人…

竹取物語

奥付の裏の白頁の左隅に行書体の綺麗な筆で名前——前の所有者だろうか——が記されている『五體字類』を古本屋で以前買ってあったのを引っ張り出してきて、分からないときにはそれを参照しつつ、手当たり次第にいろいろな文章を見つけ出してきては、もう少し自…

変体仮名

変体仮名を読む練習をちょっと前からしているのだが、上にある一葉の原稿の平仮名は直ぐに読めるわかりやすいものだと思う。まず、題名の「たけくらべ 」のうち、「く」「ら」が変体仮名であることが分かる。「く」の変体仮名は上の方に小さい「く」があって…

雑記

最近、単なる思いつきで記事に使うフォントを明朝体に改めてみたのだが、少なくとも自分には読み易いのでそのまま使い続けている。ひとつ〳〵の文字に「抑揚」があるというのはやっぱり大事なことなんだなあと改めて思った。蓮實重彥の『ショットとは何か』…

「星」正岡子規

子規遺稿集『竹乃里歌』から 星 錄九首 (明治三十三年) 眞砂(まさご)なす數(かず)なき星のそのなかに 吾に向ひて光る星ありたらちねの母がなりたる母星(はゝぼし)の 子を思ふ光我を照らせり玉水のしづく絕えたる檐(のき)の端(は)に 星かがやきて長雨(ながあ…

雑記 (爲にならない漢字の話)

漢字の知識を増やしたいという慾望をもって意識的に努力をした記憶がこれっぽっちも存在しないのは、もしかしたら『反=日本語論』にある次の一節を読んだことが知らず知らずに抑圧となってしまったのかもしれない。尚、『反=日本語論』は 1977 年の出版であ…

未央柳

梅雨寒の午後に歩いていると、小雨に濡れてビヨウヤナギの黄色い花が道辺に咲いているのが目にとまった。漢字では「未央柳」と書かれるこの落葉低木は、谷崎潤一郎『盲目物語』終盤の北の庄落城の場面にも出てきたように、楊貴妃の美しさを喩えるため「太液…

雑記 (2)

中学生と塾で国語をやっていると、高浜虚子の例の流れ行く大根の葉の早さかなが出てきた。長い間鎌倉で虚子は暮らしていたが、最近『武藏野』を読み直したばかりなので、武蔵野の光景をこの句は詠んだのだなと直感的に思った。それで『武藏野』の文章を紹介…

雑記

高校の古文でかつて習った程度の文法知識しかない——しかも大部分は忘れている——自分であるが、それでも露伴の『對髑髏』の原文を読んでみると、規範的な文法からはかなり逸脱している部分があることに気付く。特にそれが集中しているのは、過去の助動詞「き…

三四郞

歴史的仮名遣いの練習の続き。「エ段」の拗長音「キョウ、ショウ、チョウ、……」がこの例文ではたくさん出てきた。以下、二種類の異なるあらわし方をまとめておく。二番目のあらわし方をするのは漢音由来の表記である。第一番目: 妙(めう)に、何疊(でふ)、敎…

若菜集

古本を見ていたら『若菜集』の復刻版があったので買って何ということなしに眺めていた。下の詩『春の歌』なんか「冰」は「氷」で今はあまり使わない漢字だなあ。しかし、「冰」は「氷」の正字だと辞書にある。現在は名詞は「氷」で、動詞は「凍る」を使うの…

文字詞

ロバート・キャンベル編の『Jブンガク』に出てくる『薄雪物語』の一節を読んでから、いつか全部読みたいと思っている。ここに出てくる文字詞は、御はもじ(さ): 恥ずかしい(こと) 御いもじ(さ): いとしい(こと) 御ゆもじ: ゆかしいこと そもじ様: 其方様 御見…

千早振る

先代の柳家小さんの落語『千早振る』は何度聞いても可笑しい。柳家小さん(五代目)千早振る(ちはやふる) - YouTube『伊勢物語』にも出てくるこの和歌は、小学校四年の国語に出てくるので、自分も小学生に暗記してもらったことがある。落語を聞いてもらえ…

受動態

古文を読んでわからなくなることがあるのは、受動表現である。 かかれば、この人々、家に歸りて、ものを思ひ、祈りをし、願を立つ。思ひやむべくもあらず。「さりとも、つひに男婚 (あ) はせざらむやは」と思ひて、賴みをかけたり。あながちに心ざしを見え步…

筒井筒 (2)

よくできていると思うのは、最初の方の女に疑いをもった「をとこ」 が前栽の中に隠れている場面である。ト書きを入れればこうなる。この女、いとよう假粧じて、うちながめて、(をとこの疑い強くなる)風吹けば 沖つ白浪 たつ……(疑いピークに達する)た山 夜半…

筒井筒

『伊勢物語』の二十三段「筒井筒」は高校教材にも取りあげられているテクストである。最近、本居宣長の『玉勝間』を拾い読みしていたら、五の巻「枯野のすゝき」で、この段にある最初のをとこの歌の 筒井つの 井筒にかけし まろがたけ 過ぎにけらしな 妹見ざ…

陥没地帯 (190)

塾で小学校三年生に国語を教えていたら、「夕日が背中を押してくる」の詩が出ていた。この曲は個人的に懐かしいなぁ。小学生のとき女子が合唱コンクールでこの曲を歌ったことを思い出した。YouTube で一緒に曲を聞いた。

陥没地帯 (175)

調和点列について.線分 が点 と によってそれぞれ同じ比で内分, 外分されたとき, つまりのとき, , は を「調和に分ける」と言い, 点 , , , を調和点列という. 調和点列を表わすのに, 記号 あるいは を使うことがある.すぐにわかるように (比の内項を交換すれ…

陥没地帯 (173)

これはややこしいなあ. 点 を中心に点 を角 回転し, 移動した点を とする. さらに点 とは異なる点 を中心に点 を角 回転し, 移動した点を とする. そうすると のとき, 点 から点 への回転の合成は点 を中心に角 回転したものに等しい. ここで 点 は直線 と直…

陥没地帯 (67)

依然、筒井康隆の『ダンシングオールナイト』。ラジオの「リズムアワー」に流れていたという『アット・ザ ・ジャズバンド・ボール』は、誰の演奏か書いていないけど、なんとなくビックス・バイダーベックだろうと思って念のため調べたらやっぱりそうだった。…

歩数データ

在宅勤務の影響が歩行数にどう現れているか、自分のスマートフォンに記録されている 2 月と 3 月の毎日の歩数データを比較してみたりした。5 % の有意水準で F 検定すると、等分散であるという仮説は棄却された (なお、それぞれのデータは、シャピロ・ウィル…

潜在的なものが目覚めるとき

前にもどこかで書いた気がするが、アブダクションとは C. S. パースが「演繹」「帰納」とは異なる次のような推論として導入したものである。:出来事 q がある:仮説 p だったら q を矛盾なく説明できる:だったら仮説 p はいくつも存在しえる解釈のひとつに…

補足

いままでの記事で「等確率バイアス」とか「対称バイアス」といっていたものを補足しておくだけの記事である。知っている人にはきわめて初歩的なものでつまらないと思う。 【問】乳がん検査に参加した 40 代の女性に乳がんがある確率は 1% です。女性がもし乳…

正常化の偏見

退潮期のハリウッド映画では、大作化、ビジュアル化が進み、一時期「パニック・ムービー」と呼ばれるジャンルが盛んに製作されたのは映画史の退屈な復習に過ぎない。あるいは日本の『ゴジラ』(1954) をはじめとする怪獣映画などももしかして関係しているのか…

悦ばしき変化(2)

春の陽気である。今年は静かに花見はできるし、交通機関はすいているし最高だなあ。パンデミックの初期段階で、疾病の治療/予防方法(たとえば、ワクチン)が確立されるまでの間、実行可能な政策的な選択肢というのは誰が考えたところで、感染拡大を抑制、遅…

消毒薬

トイレットペーパーやティッシュとかは論外にしても、消毒薬でも今回のウィルスに対して有効かどうかのエビデンスがなかったり、塩化ベンザルコニウムやグルコン酸クロルヘキシジンのようなノンアルコール系の消毒薬(ノンアルコール系のウェットティッシュ、…

悦ばしき変化

自宅から一番近くにある湧水地——鵠沼海岸で相模湾に注ぐ引地川の源流にあたる——がある泉の森公園を散歩していると、スプリング・エフェメラル (Spring Ephemeral) 、カタクリの蕾が出ていた。以前の記事にも書いたことがあるが、自分は東京オリンピックが終…

マスク

通勤電車の混雑した車内でマスクをしている人がさすがに増えた。マスクの効果については、昔からいろいろと議論があり、手洗いの場合に匹敵するような高度なエビデンスも(自分が知るかぎり)存在していない。そのような予防法をどう見るかは色々な考え方が…

見てられない

今週の休日も座間に行って湧水巡りしながら散歩した。上の写真は龍源院の崖下から湧き出ている水の流れの中にある小さな不動明王像。人はほとんどいないし、水の流れは清らかだし、樹がたくさんあるし、本当にのんびりできるなあ。駅からそれほど遠くないと…