ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

ニイナ

メディアで名前をよく見かける紀藤正樹弁護士は靑木正兒の甥にあたるんだということをたまたま知った。最近、青空文庫にその靑木正兒が書いた『九年母』(1956) という随筆——鶴屋八幡の広報誌 「あまカラ」60 号に掲載されたもの——があるのを読んでいたら、こ…

ちょっとマゾヒスティック

千葉雅也の『現代思想入門』がよく売れているらしい。それで思い出したのだが、浅田彰の『構造と力』が出版されたのが 1983 年のことだということである。この本に自分はほとんど影響を受けなかった。自分にとっての 1983 年は蓮實重彥の『監督小津安二郎』…

さすらひの唄

1985 年の暮れだったか 1986 年の年明けだったかも覚えていないし、どこの映画館で見たかさえ覚えていないが、ともかく封切りで見たことだけは確かに記憶に残っている相米慎二監督の『雪の断章—情熱—』(1985) をもう一度見てみたいと思ったのは公開から 32 …

「アクション」を摑む

映画はもちろんその文章も大好きなので、小森はるかさんが「文學界」今月号の特集 「『ジョン・フォード論』を読む」に寄せている文章——「掴む」が旧字で「摑む」となって『「アクション」を摑む』と題されている——をそれはもう熱心に読んだ。決して長くはな…

めくらぶだうと虹

「めくらぶだう」が「野ぶどう」に変えられていたが、宮澤賢治の『めくらぶだうと虹』の抜粋が小学校の国語のテキストにあった。抜粋部分には「めくらぶだうの實が虹のやうに熟れてゐました」 に該当する処が含まれていなかったので、小学生には野葡萄の実の…

『ジョン・フォード論』を語る。

わたくしはジョン・フォードを、アメリカ合衆国市民という条件からも、アイルランド系移民の子という条件からも解放したかった。フォードが論じられるさいにしばしば持ち出されるアイルランド性のようなものは、何らかの仕方で捨象できるはずだ。そのように…

雑記

腰を少し痛めてしまったからという訳でもないが、新聞・TVと同様、必要に迫られない限りなるべく遠ざけるように心がけているネット上の文書をあれこれちょっと読んだ。普段遠ざけている理由は見たり読んだりすると単純に不快になることが多いからだし、これ…

縞揃女辨慶 安宅の松

歌川國芳 (一勇齋國芳) の浮世絵 (『縞揃女辨慶(しまそろひをんなべんけい)』1844 年刊の十枚揃いの一枚) にある狂歌師、梅の屋による画讃は、をさな 子も ねた(だ)る 安宅の 松の鮓 あふぎづけなる 袖にすがりてと書いてある。三行目の最後の「る」が読めな…

雑記

蓮實重彥の『ジョン・フォード論』が上梓され手元に届いた。その書物の感触を確かめるためにパラパラと頁をめくっていると、ジョン・フォードの比類なく美しい映画について書かれた比類なく素晴らしい批評の言葉が波のうねりのように打ち寄せてくる。不図、…

竹取物語 (17)

中将とりつれはふとあまの羽ころも うちきせ侍りつれはおきなをいとをし かなしとおほしつる事もうせぬ此き ぬきつる人は物思ひなくなりにけれは 車にのりて百人はかり天人くして 上りぬそのゝちおきな女ちのなみたを なかしてまとへとかひなしあの書をき し…

竹取物語 (16)

内外なる人の心とも物におそはるゝ やうにて相たゝかはん心もなかりけり からうしておもひおこして弓矢をとり たてんとすれとも手にちからもなくな りてなへかゝりたる中に心さかしき ものねんしていんとすれともほかさまへ いきけれはあれもたゝかはて心地…

竹取物語 (15)

かくやひめいはく月のみやこの人にて父母 ありかた時の間とてかの國よりまうて こしかともかく此國にはあまたの年を へぬるになんありける彼國の父母の事も 覚えすこゝにはかくひさしくあそひき こえてならひ奉れりいみしからん心地 もせすかなしくのみある…

竹取物語 (14)

かくやひめみれはせけんこゝろほそく あはれに侍るなてうものをかなけき侍る へきといふかくやひめのあるところにいたり て見れはなをものおもへるけしきなり それを見て有佛なに事思ひ給ふそお ほすらん事なにことそといへはおもふ事も なしものなん心そく…

竹取物語(13)

ゆるさしとすとてゐておはしまさ(?)んと するにかくやひめこたへてそうすをのか 身は此國にかくやひめうまれて侍らは こそつかひ給はめいとゐておはしまし かたくや侍らんとそうす御門なとかさあらむ なをゐておはしまさんとて御こしをよせ 給ふに此かくやひ…

竹取物語 (12)

このないしかへりまいりて此よしをそう す御門きこしめしておほくの人ころ しける心そかしとのたまひてやみに けれとなをおほしおはしましてこの 女のたはかりにやまけんとおほして 仰給ふ汝かもちて侍るかくやひめ奉れ かほかたちよしときこしめして御つか…